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元日本語教師の海外日記

元日本語教師・英語教師/現言語教育コンサルタントのブログ🌻

リスニング練習方法と特徴

地の聴解能力と試験対策の聴解は別もの
前回の記事で聴解能力について書きましたが、今回は自分にあった練習方法を見つけられるように特徴と解決策を紹介しようと思います。

試験対策のための聴解技法ではなく、地の聴解能力を上げる練習のみ取り上げています。

リピーティング
手本となる音声に続き発話練習をすることで学習言語に慣らしながら練習するこの方法は、義務教育で英語を学んだ人は経験したと思います。
一番オーソドックスで、大人数を対象にする教室学習でよく使われる方法といえばこれだと思います。

自分の声で発音することにより、音の特徴をつかみ、耳を慣らせる目的があります。
これと似たのにシャドーイングがあります。

シャドーイング
この方法は前述の練習に似ていますが、見本の音声の発話が終わるのを待つ前に続けて発音練習をする方法です。

リピーティングと同じで、発声による耳慣れを目的にしていますが、瞬発的に文章を発話することで音処理能力を速める目的もあります。

リピーティングとシャドーイングでは、発音の正確性も確認しなくては語彙の理解ができなかったり、発音の癖がついたりするので注意が必要です。

英語学習での例を挙げると
RubberとLover
日本語母語話者にとってはRとL、BとVの音の区別は難しいですが、スペルに意識を向けないと意味もまったく違うものになってしまいます。

ディクテーション
聞いた音声を文字に書き写す練習方法。

全文を書き写す方法や、穴埋めをする方法もあり、学習者のレベルによって調整ができます。

リピーティングやシャドーイングと違って、文字に残すので学習者の弱点を見つけやすいのがこの練習方法の特徴で、どの学習者レベルにも向いています。
ただ、音を書き写す際にスペルがわからないなどの要因で練習に影響を与えることがあることも留意したほうがいいです。

実践的な聴解練習に進む前に、学習言語に耳慣れするためにも初心者が上記3つを使うことが多いです。

スクリプトとの聴解練習
発音はせずにスクリプトを目で追いながら音声を聞きトレーニングする方法。

音声と文字を結びつけやすく、発音するストレスもなくできる
しかし、文字の方ばかりに気を取られ聴解練習にならないこともあるので使い方に注意が必要。

同じことが映画の字幕、歌詞にも言えます。
人の脳は読むことと聞くことと一緒に処理することはなかなかできません。
(同じ理由で、聴解試験で問題や選択肢を読みながら音声を聞くのも絶対におすすめしません。)

文字情報や映像などと一緒に処理する聴解能力はトップダウン処理に属します。

例えば、中国圏の学習者は字幕に書いてある漢字をみて予想をすることができます。
書いてある漢字で予想ができてしまうなら、それは聴解能力練習の邪魔になり学習者にはプラスにはなりません。
この例で言いたいことは、学習者が得意とする能力が聴解能力よりも高かったらそれが練習の邪魔をしてしまうということです

特別な例がない限り、言語学習者は語彙や文法能力が聴解能力よりも勝っていることが多いので、自身の傾向を把握して聴解練習を組み合わせながら進める必要があります。

次回の記事には上記を踏まえて、多数に効果があった練習方をタイプ別に紹介していますので、参考になれば嬉しいです🌻

 

 

嫌な思いを避けるために(異文化ニュージーランド)

『ジャバウォックの詩みたい』=ナンセンス
海外の人とコミュニケーションを取ったことがある人は、言葉が話せてもスムーズにコミュニケーションができないという経験をしたことがあると思います。

『お辞儀をする』などの目に見える文化は意識しやすいですが、目に見えない文化には自分から気づくことは難しいです。
そしてその見えない文化はコミュニケーションを取るために意外に重要だったりします。

文化は聞き手の役割で分けられている
文化人類学者のHallはコミュニケーションのタイプを高文脈文化・低文脈文化に分けています。

高文脈文化(ハイコンテクスト文化):
言葉で発された以上の情報を相手が察することが前提の、『言わなくても伝わる』を期待している文化。

実際に、高文脈文化の中でも高い指標を持つ日本は空気さえも読むことが期待されますよね。

低文脈文化(ローコンテクスト文化):
高文脈文化とは逆に、発せられた情報以上のことを受け取る必要はなく、『言わないと伝わらない』文化。

ただ文脈への依存度が高いか低いかということなので、文化度の高低を評価しているわけではありません。

日本での礼儀正しいとされている誘いへの断り方

日本では直接断らなくても、抽象的に約束をして実際には予定は立てない『社交辞令』をすることがよくありますよね。

お互いに日本語を母語とする話者であったら、雰囲気や言い方、表情などの非言語的要素でやんわりと理解したり、後からになって『社交辞令だったのか』とちょっとがっかりしたりすることも高文脈文化の特徴だと思います。

『友達に時間があるときにって言われて、結局会えなかった』

集団主義に属する日本では断る時も、相手のメンツを立て“和”を重んじる方法が確立されています。

日本語学習者がこの日本の文化を知っている/いないのとでは日本への印象もずいぶん違うと思います。

 (集団主義個人主義についての記事)


間違った印象を与えなくてすむように
低文脈文化に属する国は多文化国家が多く、言語や文化が違うと『言わないとわからない』ことばかりだからこそ低文脈文化が根付いたとされています。
なので、移民も少ない単一言語国家の日本で育った私たちは自分たちが気づかない以上に文脈から推測するのに慣れています。

『あの頃はほんとにジャバウォックの詩みたいだったよ』
ニュージーランドの高校で出会った友達は、ふと笑いながら言ったことがありました。
『最初話したころはなぞなぞっぽかった』

ジャバウォックはその独創的すぎてナンセンスな詩で有名なルイスキャロルの作品です。
『あれ』とか『それ』で通じるコミュニケーションに慣れていた私はニュージーランドでも同じような感覚でコミュニケーションを取っていました。
そして、話す内容も抽象的で掴めなかったと思います。

そんな私も今では低文脈文化に慣れてしまい、日本の友達と話すと特に『ごめん、あれってなに??』と不思議がる立場になってしまいました。

よく『外国に染まる』というマイナスな言い方をしますが、その大抵は異国の地で暮らすために順応した非言語コミュニケーションの現れです。

私は中学卒業後に海外に出て文化の違いを教わる機会もなかったので、ミスコミュニケーションをした後でないと違いに気づくことがありませんでした。
文化の違いを知っていれば与えずに済んだ印象やしなくてもいいミスコミュニケーションも多くあったでしょう。

言語学習は言語だけに目を向けがちですが、相手がいてのコミュニケーションなので文化の違いも併せて学ぶと円滑なコミュニケーションに一役買ってくれると思います。

外国語が話せるようになる条件

外国語を話せるようになる条件
長期留学したら話せるようになるのか?

どのくらい行ったらいいのか?

学習している目的言語を実用化するために留学は有効な手段に思えますよね。
どの程度を『話せる』とするかによっても差はありますが、ここでは日常会話ができるレベルとして話します。

言い回しやアクセントを学ぶには会話は強い
器用な言い回しができたり、ネィティブのようなアクセントがあったりする学習者には驚かされます。

フィリピンでの例を出すと、日本に出稼ぎに行っていた人にこの学習者タイプが多く、基礎知識がないまま会話の中で日本語を学んだ人がほとんどでした。
こなれた言い回しや外国語学習者特有のアクセントが弱いことから、話す言葉だけを聞くと日本語の能力もかなりありそうだと思ってしまうほどの人もいました。

アクセントが弱いほど実際の言語能力も高そうに思いがちですが、会話からは細かい文法知識は学べません。

会話で学んだ学習者タイプに共通する悩みが実用能力検定の勉強に躓きやすいということです。

これは日本語に限らず、言語全般に言えます。

基礎の大切さ
何をするにしても基礎は重要で、築き上げる土台がしっかりしていないと崩れやすくなることは想像ができると思います。
言語教育方法の1つに会話などで学ぶフォーカスオンミーニングがありますが会話で学ぶ環境では細かい言語知識を学べませんので自分で勘違いした間違った文法規則ができあがっています。

例えば、会話の中でをよく聞く『だよ』を語尾に付けるものだと認識した学習者はその規則を過剰に使うことがその1つです(過剰般化)。
本来ナ形容詞と名詞に使うべき文法をイ形容詞や動詞にも過剰に当てはめてしまうミスの種類です。

文法の基礎知識があれば後々に気づくこともありますが、基礎がないとそのまま化石化してしまい修正するのが難しくなります
(化石化:間違いが修正されることなく定着してしまうこと)

  
正確な文法知識で伝えたいことが伝えやすくなる
子供が言語を習得する過程と臨界期を過ぎた大人の学習過程は異なります。

話を戻しますと、
日本の義務教育の英語では文法知識を主に学びますし、専門的な会話をしない限り、日常会話に必要な英語力は中学生で学ぶ文法で足りると言われています。

現に、私もニュージーランドに行ったときの英語知識は中学レベルでした。

海外に行って目的言語を上達させるためには、基礎とアウトプットの機会次第です。
基礎がしっかりしていないと誤った言語知識を身につけやすくなってしまいますし、伝えたいことの幅も狭くなってしまいます。
そして、会話から入った言語学習は後に苦労しますが、基礎があって会話力を伸ばすのはアウトプットする機会次第で大きく飛躍できます。

会話には聴解能力の有無も大きく左右しますが、基礎とアウトプットの機会さえあれば短期間の渡航でも駅前留学でも十分な成果が出ると思います。

逆にこの条件がなければ1年でも10年経っても使えるようにはならないでしょう。
それほど基礎と機会は重要です。

関連記事🌻🌻
フォーカスオンミーニングなどの言語指導法について書いた記事です。

パートナーがいると語学力が上がるって本当?

パートナーがいると語学力は上がる?
この記事に関連していますが、読まなくても今回の内容はわかります😊
今までに様々な動機で日本語を学習し始めた人に出会いました。
その中で目に見えて学習成果があった学習者には
『パートナーが日本人だから日本語を勉強したい』
という動機を持っている人が多かったです。

学習動機とモチベーション
義務教育で英語を勉強した私たちが実感しているのは、コミュニケーションを取るための学習と点数を取るための学習は大きく違うことだと思います。
点数の為の言語学習は、増えた減ったことに関わらず点数が目に見えるので成果がわかりやすいです。

一方で、コミュニケーションの為の言語学習は成果が主観的であり漠然としたものです。

相手がいてのことなので自分一人では成果が見えないのもその特徴だと思います。

前回のブログで内発的動機と外発的動機について書きましたが、
外発的動機の同一視的調整段階から内発的動機に一番移行しやすいのもコミュニケーションをする相手がいての言語学習の特徴でもあります。

できなかったからできるへ
誰かと話すために言語を学習するのは本当に楽しいです。

今まで言語の壁で分かり合えなかった相手とも、言語1つで分かり合えるようになることがたくさんあります。
一所懸命に作り出した文が相手に通じたときの喜びは他には変えられないものだと思います。

通じなかったことが通じる。
できなかったことができる。

指導者の立場からも指導している学習者が成果を上げ、言語学習の楽しみを見出すことは喜ばしいことだと思います。

できる経験をする学習環境作り
内発的動機が学習への意欲を増幅することは前記事に書いた通りですが、この『できなかったことができる』経験を利用して内発的動機へと導く環境作りへと応用ができます。

そのために、Krashenのインプット仮説の観点からも学習者のレベルよりも少し難しいくらいのインプットを十分に与え、アウトプットしやすい環境を作る。
楽しいという感情はアウトプットのときに生まれやすいからです。

アウトプットから最大限の成果を得るには
ある実験例で語学学習者を3つのグループに分け、難しい課題に挑戦する学習者の割合を調べたものがあります。

グループ1:指導者はこのグループの能力に関して誉める 例『頭がいい』
グループ2:指導者はこのグループの努力に関して誉める 例『よく頑張っているね』
グループ3:指導者はこのグループを誉めない

この中でグループ2が自分の能力以上の課題に積極的に挑戦した人数が比較的に多かったそうです。

人は能力に関して誉められると『失敗したくない』『能力がないと思われたくない』などの理由から難しい課題に消極的になるそうです。
もちろん、学習者タイプなどの様々な要因で全員にこの仮説が当てはまるわけではありません。

学習者に『できなかったことができる』という状況を作り出すには学習者の難問に挑戦する姿勢にも気を配る必要があると思います。

グループ1のように『失敗すること』を恐れ消極的になると『楽しい』という感動を得る機会も少なくなります。

作文で自分の気持ちを綴ったり、指導者などと会話練習したりと目的言語をアウトプットして通じる喜びを積極的に教室学習に取り入れることは学習者にとって精神的にもプラスになると思います。
その際、『できなかったら怒られる』などの環境では貴重な内発的動機へと導くチャンスをなくしてしまうことにもなります。

委縮した学習環境では、アウトプット仮説の観点からもアウトプットの際の“気づき”から得る学習成果を減らしてしまいます。
言語指導者は学習計画や言語知識に重点を置きがちですが、受け入れる側の学習者が万全じゃないとせっかく準備した学習計画も効力を発揮できません

学習効率を最大にするという点でも、話したい相手がいる環境は語学力に大きなプラスになると思います🌻

フィリピンの英語

英語と聞いて思い浮かぶ英語は?
英語といって思い浮かぶのはイギリス英語やアメリカ英語。
世界のあらゆる人に話されている便利な言語です。
たくさん話されているからこそ、種類やアクセントもバラエティー豊かですよね。

KachruのWorld Englishes (世界の英語)- 英語の種類
そんな英語を言語学者のKachruは同心円を用いて内円・外円・拡大円に分類しました。

内円に属するのが、イギリス、アメリカ、オーストラリアなど英語が第一言語として話されている地域

外円にフィリピンを含む、シンガポール、インドなど、多言語国家で英語が公用語の扱いをされている地域。

拡大円に日本を含む、英語が公用語ではなく外国語として位置付けられている地域。

アメリカの植民地であった過去から、フィリピンも英語は公用語の1つ。

アメリカ英語がベースですので、イギリス英語圏に住んでいた私は細々と気を付けることがあります。

例えば、日付。今日の日付だと…
アメリカ英語 月-日-年 (7/31/2020)
イギリス英語 日-月-年 (31/7/2020)

標識もニュースも英語が使われているのでタガログ語がわからない私でも日常で困ることは特になく有難かったです。

それに、フィリピン留学も流行っていますよね。

私の知り合いもフィリピン留学で英語慣れをしてから、内円の英語国に行く人が多いです。

フィリピンに経済格差があるように英語力も差が顕著

興味深かったのは自分の教養を誇示するためにあえて英語で話す人も多く見かけたことです。

『ここでは社会的地位が大事。英語ができるかでその人の教養の高さを周りは見てるんだ。それに英語が話せるだけで出世できる会社もたくさんあるんだよ』フィリピン人の友人は教えてくれました。

どれだけ流暢に”くせ”がない英語を話せるかで話者の社会的位置づけが客観視されているそうです。

裕福な家庭は子供を教育水準の高い海外に留学させることも多く、私がAUSやNZで出会ったフィリピン人留学生の持ち物は確かにきらびやかでした。

それだからか、自分の英語に劣等感があるフィリピン人は外国人(特に内円の英語圏)とあまり話してくれないことがよくあります。
『恥ずかしい』とか『理解しているけど話せない』とか理由は様々です。

多言語国家で、植民地の影響から英語が使われるようになったフィリピン英語は内円の英語とは事情が違います。

それぞれの英語力は本当に差がありました。

言語は日々変化する
フィリピン特有の表現など様々な発見があって楽しいです。

その1つが "Salamuch!" 
Salamat -(サラマット)タガログ語でありがとうとVery muchの造語です。

英語から話がそれますが、
日本語にも造語がありますし、日本語にもバラエティーがあります。

教科書にはない役に立つ日本語を知識程度に紹介することも、日本で暮らす前の日本語学習者にとっては大事なことかもしれません。

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