実際の聴解能力を聴解試験では測られていない
IELTSやJLPTなどの能力試験対策についての記事はごまんとあるので、
ここで対策方法を書くつもりはないのですが、どうして試験対策が必要なのかを言語学の観点から話そうと思います。
聴解をボトムアップ処理で万全にカバーできる能力があれば単純な話ですが、実際にはそう簡単にいかないのが試験です。
(トップダウン・ボトムアップ処理についての記事)
実際の聴解能力と聴解試験が大きく違う点は
・ほとんどの外国語試験は選択式
・ある程度の聞き取りと推測で得点が得やすい
各試験によって特徴が異なるので、試験対策をしっかりして、
トップダウン処理を有効に活用すれば高得点を狙える可能性が高くなります。
でもこれでは実際の聴解能力を測っていることになりません。
実用能力試験は万能ではない
あるアイルランド人が他の英語圏でのビザを得るためにIELTSを受けた話があります。
アイルランドにはアイルランド語もありますが、英語圏なので必要スコアを得るのには問題がないように一見見えますよね。
Kachruの分類からもアイルランドは内円国に位置し、拡大円に位置する私よりも格段に高スコアを狙えそうです。
(英語の内円、外円、拡大円についての記事)
もしこの人がみんなの予想通りに必要スコアを得てビザ申請したならここまでニュースになりません。
この話が人々の興味を引き付けた理由は英語母語話者に関わらず必要スコアを取れなかったことです。
このニュースを少し前に読んだことがある方もいるかもしれませんが、
英語が母語の受験者なのにどうして必要スコアが取れなかったんだ?と話題になりました。
この手の話はIELTSに限らずJLPTでも他の外国語の能力試験でもよく聞く話です。
どうしてこんなことが起こってしまうのか?
それはまず冒頭で述べたように、能力試験は試験慣れや試験のコツを掴めば自分の実力以上のスコアを比較的取りやすいですし、試験慣れしていなければ本来の実力よりも低いスコアがでることが十分にありえます。
試験で測られる言語の基準は一体何か?
例えば英語試験なら出される音声は内円や外円の英語が音声で出題されることはあるでしょうが(外円は滅多にないですが)、拡大円の英語はでてこないでしょう。
日本語能力試験も同じですが、標準的な語彙やフレーズが使われ方言やスラングもでてきません。
これはよっぽど特化した言語試験じゃない限りどれも同じだと思います。
流される音声は一回きり、間が空くことなく長時間で一方的に聞くには相当の集中力も必要です。
単純に聴解能力を測られているわけでないので、聴解試験対策は他の能力よりも伸びにくいですし対策するのには苦労します。
もし聴解試験のスコアに伸び悩むことがありましたら、トップダウン処理の意識とその能力試験のコツをしっかりと把握することで変化がでてくると思います😊