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元日本語教師の海外日記

元日本語教師・英語教師/現言語教育コンサルタントのブログ🌻

記憶の特性とリハーサル

前回からの続き

学習の鍵はワーキングメモリ
ワーキングメモリは取り入れた情報を短期的に保持して処理する記憶システムのことです。

どうしてワーキングメモリが学習の鍵を握っているかというと、新しい内容を学ぶ頭の中では、与えられた情報を自分なりに処理しています。

中央実行系と呼ばれるシステムが長期記憶にある既存の情報と新しく得た情報を照らし合わせながら理解を進めるため、ここで情報の理解に躓くと長期的にも学習に支障がでてしまいます。

身近な働きとしては、聴解・読解問題を解く際、既に処理した情報を頭に残しながら新しい情報を取り入れ理解を進めていくことが挙げられます。

短期的に前の情報を頭に残していなければ、次の情報と繋ぎ合わせ、情報の全体像を掴んで質問に回答することは難しいです。

ワーキングメモリが弱い特徴としては
・集中力の散漫
・指示通りに物事を処理することが困難     

聴解能力の記事で集中力の大事さについて触れましたが、ワーキングメモリも集中力に密接に関係しています。
(言語能力は別として)

例えば、ネットを使って動画を観ているときにネット環境が悪く動画が途切れ途切れになると動画に注がれてた注意がなくなってしまいませんか。
スムーズな情報処理ができずに躓いてしまうと集中力も途切れてしまいます。

(集中力の聴解試験での重要性の記事)

 
ワーキングメモリの上限は7±2
私たちのワーキングメモリが処理できる容量は(対象や情報の種類によりますが)7±2の数と上限があって(電話番号の桁数・単語の音韻数など)、情報の数と同様に情報を取り込む速度もワーキングメモリの処理能力に影響しています。

ここで触れたいのが聴解試験対策としてよく挙げられる方法。
・試験音声を視覚化する(絵を描いたり、光景を思い描いたりなど)
・キーワードを書きとる

これはまるごと情報を処理するとすぐ7±2の上限になってしまうので、一度に処理する情報量を分散させ分けることで処理の負担を減らすというワーキングメモリの特性を生かした方法です。

短期記憶から長期記憶への移行(記憶の二重貯蔵モデル:Dual Storage Model)
記憶の説明でよく使われるのがAtkinsonとShiffrinが唱えた記憶の二重貯蔵モデルです。

長期記憶が短期記憶よりも容量が大きいのですが、その理由は短期記憶で必要な情報が淘汰され長期記憶へと移行されていくためです。

生きるのに必要な情報、“リハーサル”の回数が多い情報、強い印象がある情報は優先的に長期記憶へと送られやすくなります。

“リハーサル”には視覚的リハーサルと聴覚的リハーサルがあります。

視覚的リハーサルでは情報を思い描き(文字なら頭の中で音声化)、聴覚的リハーサルでは耳から情報を得ることを繰り返すことで、その情報が必要なものであると脳に印象付ける行為です。

記憶の特性を利用する
長期記憶へ移行させる方法としてよくあるのが

・覚えたい情報を反復する(リハーサル)
・失敗して印象付ける(エピソード記憶化→人に話すとリハーサル)
・人に話したり、実際に使う(リハーサル)
・五感や感情、既存情報と関連付ける(エピソード記憶化)

エピソード記憶で気を付けたい点は、リハーサルを十分に行っていないと長期記憶に移行した際に、意味ではなくエピソードだけ残ってしまうことがあります。

私が経験した例を挙げると、学校で辞書を使って調べた英語のフレーズがその晩に観た映画にそのまま出てきたということがありました。
あまりにも偶然ですごく驚いたので、その出来事は十年以上たった今も鮮明に覚えています。
でも、そのフレーズがなんだったのかは残念ながら覚えていません。

その逆で、普段使っている単語も意味は覚えていますが、どうやって覚えたかのエピソードは覚えていないと思います。

これは印象の強さから長期記憶へと送られたのではなくリハーサルの多さなどからも意味記憶として定着した例といえるでしょう。

自分に合った方法を探すには特徴の理解から
様々な実験からも万人に同じような成果がでる学習方法を確立することは、現在の技術では困難であるとされています。

同じ方法で学習しても出る結果は人によって差があるという経験、同じだけ勉強しているのに自分よりも結果がいい人がいるという経験をした人は多いと思います。

今回の記憶に関しても、書き写して頭の中で音声化する人や、音読して覚える人など好みも様々です。

好みと照らし合わせて、個々に合った学習方法を模索するためにも記憶の特徴は知っていて損はないと思います😊


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